<植物の概説>
イエルバ・マテは、ペルー・ブラジル・パラグアイなど南米各国に原生する4~8mの常緑植物で、各地で広く栽培されています。モチノキ科に分類されるこの植物は、モチノキ同様、革のように硬い葉を持っています。野生のイエルバ・マテは、川のそばに多く見られます。外見的には白い花と赤・黒・黄色の小さな実が特徴的ですが、南米各国では、葉の部分が薬草として、或いは爽快感を与えるハーブティーとして、伝統的に利用されてきています。近年では需要の高まりに対応するために、各地でイエルバ・マテの栽培が行われていますが、やはり天然モノの豊かな香と風味を凌ぐことは難しいようです。南米でイエルバ・マテといえば、日本の緑茶の如く『ナショナルドリンク』とみなされ、人々にこよなく愛飲されていますが、ヨーロッパでは『インディオの緑色の黄金』(the green gold of the Indios) と呼ばれ珍重されています。イエルバ・マテの輸出国としてはブラジルとパラグアイが知られていますが、栽培モノのみならず一部では野生から採取された天然モノのイエルバ・マテも流通しています。野生のマテの木は、丘陵地帯の湿った窪地に多く見られます。通常1本のマテの木から1年間に採取できる葉の量は、乾燥した状態で30~40kgに相当します。収穫の時期になると、『タラフェイロス』とか『ジェバテイロス』と呼ばれる採集者達が、『マンチャ』と呼ばれるマテの密生林を求め、ジャングルへ分け入っていきます。収穫の時期は5~11月で、その時期になるとマテの葉が青々と生い茂りますが、毎年持続的に収穫ができるよう、同じ木からの葉摘みは3年に一度とされるのが常のようです。
<伝統的使用法> マテリーフの浸出茶が一般的な摂取法です。2グラムのキザミをカップに入れ150mlの熱湯を注ぐ。粉末やエキス粉末の錠剤やカプセル剤は各々製品添付のインストラクションを参考にして下さい。粉末の場合で1日3グラムを1~2回が摂取量の目安となります。
<効果・効能> ドイツにイエルバ・マテを題材にした研究論文があり、その効能について詳しく述べられています。マテの伝統的な医学的利用法としては、利尿剤や強壮剤、中枢神経刺激剤などが挙げられます。また、排泄物の排出や体内の浄化を促進する効能も広く一般的に知られています。ハーブ研究家であるDaniel Mowreはイエルバ・マテを、『体全体の強壮剤』と表現し『大量に摂取したとしても、刺激を与えすぎることなく、各々のボディーシステムにおいてバランス調整を促進する作用がある』と書いています。マテの持つ身体に対する強壮作用には、睡眠サイクルを調整し、疲労回復を促進する効果があります。また、食欲を制御したり、身体を元気付けたり、筋肉に作用し疲労を取り去る効果などもマテの効能として知られています。
<適応> ヨーロッパではダイエットに用いられています。自然な方法で体重を減らしたり、空腹感や喉の渇きを忘れさせてくれる感覚を助長したりする作用があるので、理想的な自然ダイエット療法として定評があります。また、Dr.J.Balchは、その著書の中でイエルバ・マテを、『身体を浄化し、神経システムを調整し、老化を遅らせ、精神を刺激し、コーチゾンの生産能力を刺激し、他のハーブと一緒に服用すると相乗効果を生み出す作用』があると書き、関節炎・頭痛・痔核・疲労回復・ストレスに対する免疫強化・便秘・花粉症などのアレルギーに効果があるとして推奨しています。
<含有成分> イエルバ・マテの活性成分に関する研究は、1970年代中頃~80年代中頃にかけて多く実施され、その結果が報告されています。イエルバ・マテに含まれている活性成分としては、0.3~2%のカフェイン、テオブロミン・テオフィリン・サポニンや10%のクロロゲン酸が挙げられ、エルゴステロールやコレステロールに類似したステロールもまた含有されています。更にミネラルの豊富な供給源でもあり、葉には15種類のアミノ酸が存在しています。Swantson Flatt氏による、マテに非常に近いモチノキ種である“guayusa”を用いた実験では、イエルバ・マテから抽出したエキスが、ストレプトゾシン抗生物質を持つ糖尿病のマウスの低血糖症を妨げ、過食症・煩渇多飲症・体重・グリコール酸血色素を減少させたと報告されています。この研究ではマテに含まれる潜在的に有効な抗糖尿作用因となる物質の存在について言及していますが、「高血糖症や糖尿病の合併症の一つである煩渇多飲症や過食症において効果が認められた」と述べられていて、マテの糖尿病に対する使用が提案されています。イエルバ・マテの持つ抗酸化作用については、2つの臨床研究が公表されており、どちらもマテの葉で発見された抗酸化植物化学成分の素早い吸収能力によって、高い抗酸化値が実証されたことが報告されています。最新の臨床実験のなかで最も興味深いものとしては、マテの葉から分離された一群のサポニンに関する研究が挙げられます。
<禁忌> 妊娠期間中や授乳期間中の摂取は禁忌です。マテにはカフェインが含有されています。カフェインまたはキサンチンに過敏であったり、アレルギーがあったりする場合の使用は禁忌です。カフェインの過剰摂取は、高血圧、心臓病、糖尿病、潰瘍、癲癇等の方には禁忌です。マテの過剰摂取や慢性的摂取は避けるべきと考えられます(口腔癌や食道癌のリスクを高める可能性について報告されています)。マテは、生体条件外ですがMAO(モノアミンオキシターゼ)阻害作用を持つことが報告されています。MAO阻害薬を服用している場合やMAO阻害薬が禁忌となる条件では、マテの摂取前に医師へ相談が必要です。