<植物の概説>
とがった葉を付けた小枝を持つ、垂直に伸びた表面がつるりとした木です。葉の上部は長方形の槍のようで、表面に光沢があります。5枚の花弁を持つ小さな花、その中心にはカラフルな聖杯のようなおしべと、白くて単純なめしべがついています。
<伝承例>
アマゾンの先住民は、長い間、チュチューアシの樹皮を治療に用いてきました。
俗に「震える樹皮」と呼ばれ、関節炎・リューマチ・腰痛などの治療に使われてきました。彼らの間では、樹皮1カップを煎じ、1日3回・1週間以上使用するのが一般的です。
また、チュチューアシは筋肉のリラックス・催淫・疼痛緩和・アドレナリン分泌促進・防虫・免疫機能促進・月経不順などにも効果があるとされており、アマゾンの先住民は、これを添加したラム酒をジュースなどに入れて飲用したり、観光客にサービスとして振舞ったりしています。
一方ペルーでは、都会および森林の先住民の間で、チュチューアシは関節炎の治療に最適だと信じられています。地元の伝統的なハーブ治療では、骨粗しょう症・リューマチ性関節炎・気管支喘息・出血性下痢・月経不順・月経痛に利用されています。
更にアマゾンのキュランデラス地方でも、チュチューアシをほかのハーブと併用し、からだ全体の強壮・回復やいろいろな疼痛の緩和を目的に使用しています。
<効果・効能>
抗炎症・免疫向上・抗リューマチ・抗関節炎・催淫・鎮痛・筋肉リラックスなど。
<適応症>
古くから、リューマチ性関節炎や骨関節症の治療に使われています。
現在では、激しいトレーニング後の筋肉痛の緩和や、関節炎に効果があるサプリメントに配合されています。また、媚薬としてアドレナリン興奮作用を高め、強い催淫効果をひき起こすと考えられてもいます。
<研究例>
チュチューアシの驚異的な効果は、特に臨床面で注目され、いろいろな角度から検討されてきました。
1960年代、アメリカの製薬会社はマウスの免疫系を刺激し、マクロファージの活性(貪食作用)を増強することを報告しました。
1970年代に、イタリアの研究者はチュチューアシから分離した成分を皮膚がんに使用し、その抗腫瘍効果を報告しました。また、ほかのイタリアの研究者グループは1980年代に、分離した成分による抗炎症効果を報告しました。この抗腫瘍・抗炎症効果は、樹皮から分離したトリペン類の成分が抗酸化作用を持ち、その主役を担っていることが判明してきています。
わが国でも、1993年にさる研究者が、分離したアルカロイドが関節炎・リューマチに効果があることを報告しました。
また、アメリカの製薬会社の研究グループは、チュチューアシに含まれているこれらのアルカロイドの抗炎症作用が、たんぱく質キナーゼC(PKC)の酵素の生産を抑制することを証明しました。このPKCは、炎症性疾患に注目されている物質で、気管支炎・リューマチ・喘息・肺がん・腫瘍・心臓疾患などに増加することから、病気の一因であると考えられています。
チュチューアシから分離した、PKCの酵素の生産を抑制する性質の高いアルカロイド成分が、関節炎・リューマチの治療薬に有望であるという期待が寄せられています。アマゾンの熱帯雨林から、このような有望なハーブを探索する作業は、今後も続けられることでしょう。
<使用方法>
アルコールに浸したものを、リューマチ・関節炎の患者に飲ます――これが、アマゾンのジャングル地帯で最もポピュラーな使用方法です。筋肉の緊張をほぐす、そして筋肉から出た乳酸(エネルギーの燃えかす)の取り込みと除去などの作用があります。アマゾンの原住民は、チュチューアシは活力を増し、からだ全体の若返り・交感神経の刺激を高めると考えています。
チュチューアシの樹皮は、アマゾンの西の地域では都会・地方を含め、最も汎用されている治療用ハーブです。また、都市から遠隔地に居住している原住民にとって、チュチューアシは、持病の治療に欠かせない最も重宝される薬となっています。
コロンビアのシオナ族は、5㎝ぐらいの幹を2ℓの水に入れ、その量が半分(1ℓ)になるまで煎じたものを関節炎・リューマチの治療に用いています。エクアドルのクイジ族・クイチュア族は、チュチューアシを煎じ、リューマチ治療や筋肉増強・生理痛・胃痛・疼痛緩和に用いています。また、男性のリューマチの場合は、チュチューアシをアルコールに浸したものを飲んでいます。
血液浄化を目的とする場合は、チュチューアシの赤い樹皮(少し苦味があるが)に最も効き目があるといわれています。また、この場合は結核・気管支喘息・胃痛・解熱にも効き目があります。チュチューアシの摂取量(飲む量)の上限はありませんが、朝食前に必ず飲み、1ヶ月間の服用をすることが大切です。